慢性痛に役立つ4つのエクササイズ――身体を味方にする第一歩

慢性痛

慢性痛を抱えていると、身体を「敵」のように感じることがあります。痛みから逃れようと、身体から意識を切り離してしまう。そのような経験はありませんか。

神経系へのセラピーでは、身体はむしろ「回復のリソース(資源)」です。痛みは、過去に完了できなかった防衛反応が身体に残っているサインかもしれません。

ここでは、ピーター・A・ラヴィーン博士とマギー・フィリップス博士の著書『痛みからの解放』(春秋社・2025年)から、自宅で試せる4つのエクササイズをご紹介します。


1. 身体を再び「住まい」とする

どんなエクササイズ?

身体の中で、痛みがなく快適な場所、あるいは少なくとも「ニュートラル(中立的)」な場所を探します。前腕の内側や手のひらなど、ふだん気にしない部位でかまいません。その感覚を呼吸とともにゆっくり味わいます。あなたが長い期間、痛みを感じ続けてきていたとしても、身体の中には比較的痛みのないところがあるものです。

その後、痛みのある部位をそっと感じます。無理のない範囲で、自分のペースで行います。その時に感じる感覚には、ズキズキ、ピリピリ、熱さ、冷たさ、鋭さなど、いろいろな感覚があると思います。それが、あなたの意識と呼吸でどのように変化するかに注意してみてください。

そして、また安全な場所に意識を戻します。このサイクルを数回くり返します。あなたは、身体のそれらの部分に、以前には感じていなかったものを何か見つけましたか。

なぜ効果があるのか

慢性痛を持つ方は、痛みから逃れるために身体から意識を切り離してしまいがちです。しかし「身体のどこかに必ず安全な場所がある」という気づきは、痛みのトラップから抜け出すための第一歩になります。

身体を敵ではなく、リソースとして捉え直すための最も基礎的なステップです。


2. グラウンディング

どんなエクササイズ?

椅子に座った状態で、足の裏が地面に触れている感覚に意識を向けます。体重が地球に支えられていることを、ゆっくり実感します。

息を吸いながら軽く足で床を押し、吐きながら身体の緊張を解放します。押さえる感覚と離す感覚を交互に繰り返しながら、自分の身体とのつながりを感じると、どんな感じがしますか? 気持ちの安定感や、幸福感にどのような影響を与えますか?

このエクササイズは、気に入ったら1日に何度でもできます。勉強や仕事に疲れた時、ちょっと手を止めて、両足を感じて、地面とつながってみましょう。

なぜ効果があるのか

慢性痛や不安が続くと、神経系が過覚醒状態になり「浮遊感」や「現実感の薄さ」を感じることがあります。

身体とつながり、物理的な重力とのつながりを感じることで、過覚醒状態にある神経系を鎮める「避雷針」のような役割を果たします。


3. ヴーサウンド呼吸

どんなエクササイズ?

ゆっくりと息を吸い込み、しばらく間をおいてから、息を吐きながら、お腹の底から響かせるように低い音で「ヴー」と発声します。その振動が身体の内側に広がるのをそのまま感じます。この音を、息を吐ききるまで持続させます。そして、ちょっと間をおいて、次の息が入ってくるのを待ちます。

声の大きさは問いません。自分が心地よいと感じる音量でかまいません。その後、あなたの身体にどんな変化が起きたでしょうか? 何か感じ方や感覚の変化があったでしょうか?

このエクササイズが気に入ったら、数回繰り返してみてください。無理のない範囲でなら、1日に何度でも行うことができます。

なぜ効果があるのか

この発声は、迷走神経を刺激します。迷走神経は、心拍・呼吸・消化など身体の自律的な調整に関わる神経です。

過剰に興奮したり、逆にシャットダウンしたりしている神経系を、振動を通じて自律的に再調整(セルフ・レギュレーション)する効果があります。理屈ではなく、物理的な振動が神経系に直接働きかける点が特徴です。


4. ちょっと一息

どんなエクササイズ?

呼吸を変えようとしません。ただ一度の吸気と呼気が、身体を通り抜ける波のような動きを、ありのままに追いかけます。吸う息が体内を通り、そして、息が吐き出される感覚の流れを感じてみてください。吸うと吐くのサイクルの間に、身体にはどんな変化があるでしょうか。

それだけです。

もしできれば、息が入ってくるとき、息が出ていくとき、身体の中の経路をたどってみてください。あなたの身体にはどんな変化がありますか? 感覚にはどのような変化がありますか?

このエクササイズも、気軽に何度でも行うことができます。不安やストレスがあるときにも行うことができます。

この呼吸のエクササイズの焦点は、息を吸うことではなく、息を吐くことにあります。つまり、息を吐ききるのを学ぶことに意味があります。

なぜ効果があるのか

慢性痛を抱える方は「いつまでこの痛みが続くのか」という不安に圧倒されがちです。

「この一呼吸だけ」に集中することで、過去や未来ではなく、今この瞬間に留まる力を少しずつ養えます。最もシンプルで、最もどこでも試せるエクササイズです。


試してみるときの注意点

「少ないほど豊か(Less is more)」
決して無理をしないこと。小さな変化——身体のわずかな温かさ、ほんの少しの緊張の緩み——を大切にしてください。大きな変化を求めると、かえって神経系が緊張します。

感覚の言葉を使う
「痛い」という表現の裏にある、温かさ、ピリピリ、重さ、広がりなど、微細な感覚を言葉にすることが回復の手がかりになります。

まとめ

今回ご紹介した4つのエクササイズは、特別な道具を必要とせず、日常の中で試せるものばかりです。

「身体はリソースである」という視点は、慢性痛への見方を根本から変える可能性があります。まずは一つ、試してみてください。

セラピーオフィス・ほとりでは、これらのエクササイズをセッションの中でも取り入れています。慢性痛や身体の不調についてご相談したい方は、お気軽にお問い合わせください。


※ 出典:ピーター・A・ラヴィーン&マギー・フィリップス著、志村秀実訳・花丘ちぐさ監訳『痛みからの解放』春秋社、2025年