体が覚えている記憶――未処理のトラウマが「長引く慢性痛」を引き起こす仕組みと、そこからの解放

慢性痛

こんにちは。セラピーオフィス・ほとりの志村です。

これまで、当ブログでは「慢性痛とトラウマの深い結びつき」についていくつか記事を書いてきました。

過去の強いストレスやショックな出来事は、頭(思考)で「もう終わったこと」と整理がついていても、身体の神経系がその緊張を解放しきれず、今も「警戒態勢」を続けていることがあります。

では、身体の中にロックされてしまったこの「未処理のサバイバルエネルギー」は、具体的にどのようにして長引く慢性痛へと変わっていくのでしょうか。そして、当オフィスが専門とするソマティック・エクスペリエンシング®(SE™)のセッションでは、その緊張をどのように紐解いていくのか、一歩踏み込んだ具体例をお話しします。

なぜ「過去の負荷」が、今の「痛み」に変換されるのか

強い恐怖やストレスに直面したとき、私たちの身体は自衛のために、一瞬で「戦うか、逃げるか」のための膨大なエネルギーを作り出します。
つまり、心拍数が上がり、筋肉が強張り、いつでも動ける状態を作るのです。

しかし、当時の状況があまりに圧倒的で動けなかったり(フリーズ反応)、感情をグッと抑え込まざるを得なかったりした場合、その行き場を失ったエネルギーは行き場をなくし、筋肉や自律神経系の中にギュッと閉じ込められてしまいます。

この閉じ込められた緊張エネルギーは、何ヶ月、何年もの間、神経系に対して「まだ危険だ!警戒を続けろ!」というための信号を送り続けます。

これが、以前の記事でも解説した「中枢性感作(神経系の過敏さ)」を慢性化させる原因です。

システム全体の警戒音が鳴りっぱなしになるため、日常のちょっとした疲労や気圧の変化、軽いストレスに対しても、神経系が過剰に反応し、脳に「激しい痛み」の信号を届けてしまうようになります。

野生動物にはなくて、人間にだけ慢性痛(トラウマ)が残る理由

身体心理療法の第一人者であるピーター・ラヴィーン博士は、野生動物の行動に着目しました。野生動物も、日々肉食獣に襲われるような強烈な命の危機(ショックストレス)を体験しています。

しかし、彼らが生き延びた後、身体を大きくブルブルと震わせたり、深く息を吐き出したりする行動を見たことがある方もいるかもしれません。

彼らはこの「身体の自然な反応」を通じて、生き延びるために使ったサバイバルエネルギーをその場で完全に放出(ディスチャージ)しているのです。

そのため、動物にはトラウマやそれに伴う慢性痛がほとんど残りません。

一方で、私たち人間は、高度に発達した理性的な脳(大脳新皮質)を持っています。そのため、身体が震えようとしたり、涙が出ようとしたりしても、「人前で泣いてはいけない」「しっかりしなきゃ」と、身体の自然な解放反応を無意識に、理性の力で止めてしまいがちです。それが、社会的な対人関係を保つうえでのルールであるという面も大きな影響があるでしょう。

この「解放されなかったエネルギー」が身体に残り続けることこそが、人間にだけ長引く痛みが残ってしまう大きな理由なのです。

SE™のセッションでは、具体的に何をするのか?

当オフィスで行うSE™(ソマティック・エクスペリエンシング®)のセッションでは、過去の辛い出来事を言葉で根掘り葉掘りお喋りする必要はありません。

大切なのは、「今、ここ」の身体に残っている感覚にアプローチすることです。

セッションは、以下のようなステップで、あなたのペースに合わせて非常に安全に進められます。

1.「安全」の土台作り(リソースの構築)

まずは、今のご自身の中で「ここは少し落ち着く」「この感覚は心地いい」という、安心できる身体の領域(リソース)を一緒に探します。いきなり痛みに飛び込むことはしません。

2.身体の微細な感覚を丁寧に追う(トラッキング)

「今、肩のあたりにどんな感覚がありますか?」
「タイトな感じ、重い感じ、あるいは冷たい感じでしょうか」
と問いかけながら、身体の内側の感覚(フェルトセンス)を優しく見守っていきます。

3.エネルギーの少しずつの解放(タイトレーション)

ロックされたエネルギーを一気に解放しようとすると、神経系がビックリして痛みが強まったり、フラッシュバックが起きたりします。そのため、炭酸飲料のキャップを「プシュッ、プシュッ」と少しずつ緩めてガスを抜くように、本当に安全な範囲で、少しずつ緊張を外へ逃がしていきます。

セッションが進むにつれて、身体が自然と深く息を吐き出したり、温かさが広がったり、こわばっていた筋肉がふわっと緩んだりする変化が訪れます。

身体の神経系が「あぁ、あの危機はもう本当に終わったんだ。今は安全なんだ」と細胞レベルで納得したとき、上がリ続けていた痛みの強さ大きさは、自然と本来の静かな状態へと下がっていくのです。

土日限定・完全オンラインで、あなたの身体の物語を聴く

あなたの身体が今発している痛みは、過去のあなたが必死に生き延びようとし、あなたを守ろうとしてくれた防衛反応の名残かもしれません。

「もう組織の治療は終わっているはずなのに、痛みが引かない」
「心当たりはないけれど、自律神経がいつも緊張していて体が痛む」

そんなときは、頭で考えようとするのを一度お休みして、身体の神経系が発している静かな声に耳を傾けてみませんか。

当オフィスは土曜日・日曜日限定で営業しており、2026年9月〜2027年10月の建物改築を前に、完全オンラインでのセッションを優先して受付中です。

移動による身体の負担がなく、ご自宅という「あなたにとって最も安全な場所」からリラックスして受けていただけます。

20年以上、患者様に携わってきた臨床経験を持つ専門家として、あなたの神経系がサバイバルモードから安心モードへと戻っていくプロセスを、誠実に、安全にサポートいたします。

いつでもお気軽にご相談ください。

セラピーオフィス・ほとり ご予約・お問い合わせはこちら