はじめに
薬を飲んでも、しばらくするとまた痛みだす頭痛。マッサージや首のストレッチをしても、なかなか改善しない片頭痛。そんな経験はありませんか。
以前の記事「慢性的な肩こりが治らない本当の理由」では、肩の緊張が神経系の反応として維持されやすいことについてご紹介しました。
今回は、頭痛・片頭痛について、同じ身体と神経系の視点から見ていきます。
ただし、頭痛にはさまざまな種類があり、その原因や治療法も異なります。特に片頭痛は、首や肩のこりだけで起こるものではなく、神経系の働きや遺伝的要因、睡眠、ストレス、ホルモン変化など、複数の要因が関係しています。
また、頭痛の中には、緊急に医療機関での診断が必要なものがあります。
※突然発症した非常に激しい頭痛、これまで経験したことのない頭痛、発熱や首の硬直を伴う頭痛、手足のしびれ・麻痺、ろれつが回らない、意識がもうろうとする、視覚に異常がある、頭を打った後に出てきた頭痛などの場合は、この記事の内容にかかわらず、速やかに医療機関を受診してください。
頭痛は「頭だけ」の問題ではない
頭痛には、片頭痛、緊張型頭痛など、いくつかの種類があります。
それぞれに異なる身体的なメカニズムがありますが、慢性的に繰り返す頭痛には、睡眠、ストレス、生活リズム、身体的負担、首や肩の筋肉の緊張など、さまざまな要因が関係することがあります。
特に、頭痛があるときには首や肩のこり、後頭部の重さなどを伴うこともあります。
一方で、
「首がこっているから頭痛が起きている」
と、すべての頭痛を首や肩の緊張だけで説明することもできません。
薬や施術によって、その場の痛みや筋肉の緊張を和らげることはできます。しかし、頭痛を繰り返しやすくする複数の要因が残っていれば、症状が再び現れることもあります。
だからこそ、痛みそのものだけではなく、頭痛が起こるときの身体全体の状態や、そのときの生活・ストレス・睡眠などにも目を向けることが大切です。
首や後頭部はなぜ緊張しやすいのか
首の後ろから後頭部にかけては、姿勢の維持や頭部の動きに関わる筋肉や神経があります。
危険を感じたり、強い緊張状態に置かれたりすると、身体は無意識に筋肉に力を入れ、周囲を警戒するような状態になることがあります。
首や肩に力が入るのも、その一つです。
一度や二度の緊張であれば、緊張の原因がなくなった後に身体が自然にゆるんでいくこともあります。
しかし、長期にわたるストレスや、気を張り続ける生活が続くと、身体の緊張が抜けにくくなったり、首や肩に力が入っていること自体に気づきにくくなったりする場合があります。
こうした身体の状態が、頭痛の起こりやすさや痛みの感じ方に関係することもあります。
画面を見る時間と、頭痛を悪化させる要因
「デスクワークで目が疲れるから頭痛になる」とよく言われます。
実際、長時間の画面注視や近くを見る作業、同じ姿勢を続けることは、眼精疲労や首・肩への負担につながることがあります。
ただ、それだけが頭痛の原因とは限りません。
長時間の画面作業に、睡眠不足、仕事のプレッシャー、締め切りへの焦り、精神的な緊張などが重なると、身体が休まりにくくなり、首や肩に力が入りやすくなることがあります。
また、頭痛があると「また痛くなるのではないか」と痛みに注意が向きやすくなります。
このように、
身体的な負担
↓
緊張や疲労
↓
頭痛
↓
「また痛くなるかもしれない」という不安や注意
↓
さらに身体が緊張する
という循環が生まれることもあります。
もちろん、すべての頭痛がこのパターンで起こるわけではありません。
それでも、頭痛を繰り返している方にとっては、「何が頭痛を引き起こしているのか」だけでなく、「頭痛が起きたとき、自分の身体がどのような状態になっているのか」を観察してみることには意味があります。
呼吸と頭痛の関係
緊張や不安が強いときには、呼吸の速さや深さなど、呼吸のパターンが変化することがあります。
また、身体に力が入っていると、首や肩まわりの筋肉が呼吸を補助するように働くこともあります。
こうした呼吸や筋肉の変化が、首や肩の緊張とともに頭痛に関係する場合があります。
一方で、
「浅い呼吸をしているから頭痛になる」
と単純に考えることはできません。
呼吸と頭痛の関係は一方向ではなく、そのときのストレス、身体の緊張、痛みへの注意など、さまざまな要素が重なっています。
SEでは、このような身体の変化を「良い・悪い」とすぐに判断するのではなく、今、自分の身体に何が起きているのかを丁寧に感じ取ることを大切にします。
薬が、かえって頭痛を長引かせることもある
片頭痛や緊張型頭痛のために、市販薬や処方薬を繰り返し使っている方もいらっしゃると思います。
日本頭痛学会でも説明されているように、頭痛薬を頻繁に使用していると、かえって頭痛が増えたり、ほぼ毎日のように痛む状態につながったりすることがあります。
これは**「薬剤の使用過多による頭痛」**と呼ばれ、以前は「薬物乱用頭痛」と呼ばれていました。
薬剤の使用日数については、薬の種類によって基準が異なります。一般に、単純な鎮痛薬では月15日以上、トリプタンなど一部の薬剤では月10日以上の使用が3か月を超える場合に、薬剤の使用過多による頭痛が疑われます。
ただし、自己判断で薬を急に減らしたり、中止したりすることはおすすめできません。
「頭痛薬を月10日以上使う状態が続いている」
「薬を飲む回数が徐々に増えている」
という方は、薬の種類や使用状況も含めて、医療機関に相談してください。
神経系への働きかけで、頭痛との付き合い方はどう変わるか
SE™(ソマティック・エクスペリエンシング®)では、頭痛に対しても、肩こりなどと同じように、身体感覚に意識を向けることを大切にします。
まず、首や後頭部の緊張を「取り除くべき問題」としてだけ見るのではなく、
「今、身体にどのような感覚があるのか」
を観察していきます。
たとえば、
「頭のどのあたりに、どんな感覚がありますか?」
「重さがありますか?」
「締め付けるような感じですか?」
「ズキズキしていますか?」
といった具合です。
ここで大切なのは、痛みを無理に変えようとしないことです。
痛みをなくそうとして身体に力を入れるのではなく、「今、この瞬間にどんな感覚があるのか」に静かに気づいていきます。
SEでは、こうした身体感覚への気づきを通じて、自分の身体の状態をより安全に感じられるようになることを大切にしています。
外側から無理に緊張をほぐそうとするのではなく、自分の身体の変化に気づきながら、少しずつ身体との関係を取り戻していく。
そのようなプロセスを重視します。
なお、SEが片頭痛や緊張型頭痛の治療法として医学的に確立しているわけではありません。 頭痛がある場合は、まず頭痛の種類や原因を医療機関で確認することが大切です。そのうえで、身体感覚への気づきを深める方法の一つとして、SEを検討することができます。
今日からできる小さな試み
今、頭や首に力が入っていると感じたら、無理に力を抜こうとせず、次のことを試してみてください。
1.後頭部や首の感覚に気づく
「重い」「締め付けられている」「熱い」「冷たい」など、今感じているものを、そのまま観察します。
2.肩に入っている力に気づく
肩の力を抜こうとするのではなく、
「今、どのくらい力が入っているだろう?」
と、少しだけ意識を向けてみます。
3.自然に出ていく息を感じる
深く吸おうとしたり、呼吸をコントロールしたりせず、自然に出ていく息を感じてみます。
30秒ほどで十分です。
頭痛が強くなる、気分が悪くなる、不安が強くなるなどの場合は、無理に続けず中止してください。
まとめ
慢性的な頭痛や片頭痛を繰り返す背景には、首や肩の筋肉、目の疲れだけでなく、睡眠、ストレス、生活リズム、身体的な負担、痛みへの注意など、さまざまな要因が関係していることがあります。
首や肩の緊張が頭痛に関係する場合もありますが、それだけですべての頭痛を説明することはできません。
だからこそ、頭痛を「痛みそのもの」だけで捉えるのではなく、
今、身体はどのような状態なのか。
どんなときに緊張が強くなるのか。
睡眠やストレス、生活リズムはどうなっているのか。
痛みが出たとき、身体にどのような変化が起きているのか。
そうしたことにも目を向けてみることが大切です。
頭痛への対処は、痛みを我慢したり、無理に身体をリラックスさせたりすることだけではありません。
まずは必要な医療的な評価を受けたうえで、自分の身体に起きている変化を少しずつ知っていく。
そのことが、頭痛との付き合い方を見直すきっかけになるかもしれません。
※今までに経験したことのない激しい頭痛、突然発症した頭痛、発熱や首の硬直、手足のしびれ・麻痺、ろれつが回らない、意識がもうろうとする、視覚の異常、頭部外傷後の頭痛などがある場合は、まず医療機関を受診してください。
また、頭痛薬を頻繁に使用している、薬を飲む回数が増えている、頭痛がほぼ毎日のように続いているという場合も、自己判断で薬を調整せず、医療機関に相談することをおすすめします。
参考文献・出典
- 日本頭痛学会「薬剤の使用過多による頭痛」
- ラヴィーン, P. A.(池島良子ほか訳)『身体に閉じ込められたトラウマ』星和書店、2016年
- ヴァン・デア・コーク, B.(柴田裕之訳)『身体はトラウマを記録する』紀伊國屋書店、2016年
痛みや不調が長く続いている方へ
当オフィスでは、お話をうかがいながら、身体の感覚を手がかりに神経系へ働きかけるSE™やEMDRを行っています。言葉で整理するだけでなく、身体からも痛みの背景に近づいていきます。まずはいまの状態とこれまでの経緯をお聞きし、無理のないペースで進めます。
→ セッションの流れ・料金
参考文献・出展
- ラヴィーン, P. A.(池島良子ほか訳)『身体に閉じ込められたトラウマ』星和書店、2016年
- ヴァン・デア・コーク, B.(柴田裕之訳)『身体はトラウマを記録する』紀伊國屋書店、2016年
- 日本頭痛学会「薬剤の使用過多による頭痛」(https://www.jhsnet.net/ippan_zutu_kaisetu_05.html)